被災地ツアーの下検分会にて

東日本大震災から12年が過ぎても遠い地より被災地に足を運び被災の爪痕や現地の人たちの声に耳を傾け、地域復興を応援してくださっている方々がいらっしゃいます。
そんなみなさんと被災地を巡る小さなツアーの計画が進んでいて、大船渡市内やその近隣も候補となったので、8月の下旬に下検分会を行いました。お盆を過ぎた8月の東北は涼やかな虫の声とさわやかな風が心地よい季節の始まりです。が、今年の暑さは尋常じゃない、そんな中での下検分会でした。

大船渡市大船渡町の街並み

被災地ツアーは地元の人たちとの交流会も予定しているので、会場候補として陸前高田市小友町にある「気仙大工左官伝承館」を訪ねました。

気仙大工左官伝承館 入口

気仙大工左官伝承館は明治初期のころ気仙(ケセン)地方に存在した茅葺平屋建ての民家です。岩手県陸前高田市は、高い技術力を誇り日本四大名工にも数えられる「気仙大工」の発祥の地されています。そんな気仙大工の建築技法を後世に伝えるために建設されたのが、気仙大工左官伝承館です。

懐かしい囲炉裏端

玄関を入るとすぐに土間が広がり、土間から囲炉裏へと続き、囲炉裏の上には煮炊きするための自在鉤があり鉄瓶がぶら下がっています。土間に続き、台所と板の間の居間がありますが、中に入った瞬間の煙たさと煙のにおいがとても懐かしいです(その時代を知っている年代ですから(笑))
煙のにおいがする囲炉裏端で気仙地方の昔の暮らしや震災当時のことを管理人さんが「ケセン語(方言)」で語ってくれます。
このような歴史を感じる場所で集い、現在、過去、未来を語り合い、今思う助け合いや支え合いがこの先の社会や地域づくりにも存在し続けるように、と思いつつこの懐かしさも体験してもらいたいなあとしみじみ思うのでした。

余談ですが、
幼いころ、台所も居間も板の間で、食事はお膳だったので子ども(わたし)は配膳とお膳の前に座布団を並べ、食事が終わるとお膳拭きと座布団片づけ係でした。お膳を重ねるとき「重ねる向きが違う」とよく注意されていました(笑)囲炉裏の横座は祖父、下座は母。その周りは祖母や父、子どもでした。
夏は家中の戸を開け放し、湯冷ましは欠かせない、昼はほぼ生利節ときゅうりの酢の物で。そしてやりたくもないお昼寝を強要されるのでした。
気仙大工左官伝承館を訪ねるたびに幼いころの記憶が懐かしく、切なく蘇ります。

【記事 佐々木敦子】